本という文化との接点を維持・発展させていくために、
持続可能な出版流通の構築を目的として
出版流通改革に取り組んでいます。

出版流通改革の進捗はレポートをご確認ください。

出版流通改革の
背景にある課題

出版業界における課題

  • 出版マーケットのシュリンク
    (縮小)による収益減

  • コスト高騰・物流量減少など
    による
    配送効率の悪化

出版業界を取り巻くさまざまな変化の中で、昨今の出版マーケットはシュリンクを続け、2021年の販売総額は1兆2,080億円と、ピーク時の2兆6,564億円(1996年)と比較して、45.4%にまで落ち込んでいます(※1)。人と本とのタッチポイントである全国の書店軒数は減少の一途を辿っており、全国の自治体のうち、書店のない自治体は2割にも上ります(※2)。

加えて、今、国内のあらゆる産業が、物流危機に瀕しています。物流全体に起きているコストの高騰に出版物の物量減少が組み合わさることで効率が悪化し、運送会社は経営難に見舞われています。結果として、配送網を維持するための運賃値上げ要請が相次いでいるという構造です。本来であれば、物量減少に比例して下がるはずの運賃が、現在の物量では最低保証運賃に抵触してしまう割合が増え、固定化が進んでいます。運賃の値上げと固定化により、当社における送品高運賃構成比(送品高に占める運賃の割合)は現在も上昇基調が続いており、また1冊の本をお届けするために必要な運賃についても、物量の減少に比例することなく上昇しています。

これらのことから、出版流通の持続性は危機的状況にあり、当社としても、全国津々浦々に出版物を届けるという使命を果たし続けることが難しくなってきています。

※1 出典:出版指標年報2022年版(出版科学研究所)
※2 日販調べ

出版流通改革で
目指す姿

  • 出版物の多様性を守る

    多様な出版物が発行され
    流通され続ける

  • 書店が儲かる構造を
    つくる

    全国の書店と読者との
    接点を守り続ける

当社の考える出版業界のあるべき姿は、出版物の多様性が守られ、かつ書店が儲かる構造になっていることです。
当社は創業以来、文化を担う出版物を、そこから生まれる心の豊かさを、読者に届け続けてきました。これからも多様な本が生まれ、全国に本と出会う場があり、1冊1冊がしっかりと読者の手に届く。こういった当たり前の姿を守っていきたいと考えています。そのために、この先の未来にも、街に書店と本があり続ける世界をつくるという強い想いを持って、出版流通改革に取り組みます。

これまでの
取り組み

当社はこれまでも、書店、出版社、日販の業界三者の利益を最大化するため、出版流通の効率化に努めてきました。

www.project(2001年~)

単品レベルのマーケット情報をネットワーク上で共有し、市場ニーズに基づいた生産・流通・販売を実現することを目的とした取り組みです。返品率を下げ、それによって生まれた利益をシェアし業界三者がwin-winの関係になることを目指しました。これにより2003年に生まれたのが、出版社向けマーケット情報開示システムであるオープンネットワーク「WIN」です。

※2022年より、「WIN」に代わり流通データや書店店頭の販売データがリアルタイムで把握できる「CANTERA」をカタリスト社を通じて提供しています。

出版社向けマーケット情報開示システムであるオープンネットワーク「WIN」の図

取引制度改革(2009年~)

業界のムダを利益に変えるため、2つの視点から収益改善に取り組みました。
ひとつは、「委託制度をベースにリスクと利益の再配分をする」ことで、業界三者間の構造を「返品を少なくすれば利益が増える」状態にする方法です。お取引書店に関してはPARTNERS契約(※)を締結し、返品率改善で生まれた利益をインセンティブという形で還元するようにしました。
そしてもうひとつは、「買切制度」という視点からのアプローチです。計画販売や商品ごとのインセンティブなど、書店が意識を持って仕入れ、売り切ることを増やし、それを常態化することでマージンの高い商品の比率を上げていくことを目指しました。

※返品削減・売上拡大により得られたプロフィットを業界三者で分け合うという考えに基づいた契約

<契約体系図(2022年3月時点)>

契約体系図
  • PPIプレミアム

    書籍の粗利改善に向けて、拡大を進めている低返品・高利幅スキームです。

  • 雑誌買切施策

    雑誌の粗利改善に向けて、時限再販、非再販の雑誌を買切扱いとし、書店マージンを高めるスキームです。

PARTNERS契約および、
それを支えるメニューについては、
こちらより詳細をご覧ください。

PDF

出版流通改革

書店における厳しい経営環境や物流コスト上昇などの課題を解決し、この先の未来にも、街に書店と本があり続ける世界をつくるためには、これまでの取り組み以上に、さらに抜本的な改革が必要です。
そこで当社は、「出版流通改革」として、物流協業や拠点統廃合などの取次自助努力によるコスト削減を前提としつつ、書店の経営の持続を実現するための取り組みを「取引構造改革」、全国への配送網を維持するための取り組みを「サプライチェーン改革」と位置付け、この2つの軸で、持続可能な出版流通の構築を目指しています。

取引構造改革とサプライチェーン改革の2つの軸で、持続可能な出版流通の構築を目指す図

取引構造改革

流通の最適化と業務プロセスの効率化により、書店のマージンを30%以上にすることを目指します。

  1. 01

    書籍粗利改善
    (PPIプレミアム)

  2. 02

    雑誌粗利改善
    (雑誌買切施策)

  3. 03

    オープンデータ
    プラットフォーム

  4. 04

    流通スキームの
    見直し

    (Web仕入受付、ネットワーク在庫、デジタル印刷スキーム)

サプライチェーン改革

現地配送の効率向上、本以外の商材の取り込みや他業種配送への乗り入れによる運行効率向上で、持続可能な出版配送の構築を目指します。

  1. 01

    配送コース再編

  2. 02

    配送のオープン化

ESG

出版流通改革は、本を愛する読者のみなさまや出版業界のためだけでなく、サステナビリティの観点で、ESGと表裏一体のものです。
業界のインフラを見直し、地球環境や労働環境にやさしいビジネスや流通に変えることは、CO₂排出量削減や社会貢献にも繋がります。

  1. 01

    流通の最適化による
    返品削減

  2. 02

    配送コース
    再編による
    CO₂排出量削減

  3. 03

    トラック
    ドライバーの
    労働環境改善

日販のESGはこちら

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