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2024年 年間ベストセラー総合第1位は
『変な家2 ~11の間取り図~』(飛鳥新社)

■ランキング全体の傾向

2024年年間ベストセラーは、モキュメンタリー(※)という没入感の高い新しい表現手法の登場、出社回帰による美容・時短調理・コミュニケーションスキルなどのニーズの高まりといった社会トレンドがランキングに色濃く表れた。 また、2024年上半期にランクインした作品と同じシリーズ・関連作品が引き続き多くランクインしたことから、作品の不動の人気ぶりがランキングに根強く反映された結果となった。

※モキュメンタリー:フィクションをドキュメンタリーのように見せかけて演出する表現手法

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■ジャンル別の傾向

【総合】雨穴が初の快挙!「変な家」シリーズがランキングを席巻
2024年上半期に引き続き、ホラー作家でYoutuberとしても活躍する雨穴の人気作『変な家 2 ~ 11の間取り図~』が2024年年間ベストセラー第1位に輝いた。第5位のシリーズ第一作目である『変な家』は紙の書籍のシリーズ累計発行部数224万部を突破した。(2024年11月28日時点)。『変な絵』も第6位にランクイン。同一シリーズが総合・単行本フィクション・文庫で三冠を達成し、かつ上半期・年間ベストセラー共に2連覇を果たした。「変な家」シリーズのように、ドキュメンタリーの形式を模倣しながらも、フィクションの要素を取り入れた手法であるモキュメンタリー(mockumentary)の人気は、背筋が書いた『近畿地方のある場所について』『口に関するアンケート』などが、週間・月間ベストセラーに度々ランクインしていることからも見て取れる。イマーシブの手法を取り入れた没入体験イベントが注目を浴びている中、読者に疑似的なリアリティを提供するという作品の人気が高まっていることから、フィクションとリアルの中間にあるような、より没入感の高いエンタメに注目が集まってきていることがうかがえる。
また第21回本屋大賞のほかにも数々の賞を獲得している『成瀬は天下を取りにいく』は第3位、続編の『成瀬は信じた道をいく』は第12位と、2024年上半期よりもさらに順位を上げた。リアルなホラードキュメンタリーと共感を呼ぶ青春小説、一見対照的なようで、登場人物への同一化や共感、感情移入という、読者が作品の世界観に没入する点では似ている2作品が人気を集めた年となった。

【単行本フィクション】雨穴・背筋作品、モキュメンタリーホラーが好調!タイトル受賞作や定番作品の人気も継続
雨穴の『変な家 2 ~11 の間取り図~』が2024年上半期に引き続き第1位を獲得し、総合・フィクション・文庫の三冠での連覇となった。今年はモキュメンタリーホラー作品が好調で『変な家』『変な絵』も第3位、第4位に、背筋の『近畿地方のある場所について』も第8位にランクインし、上位10位のうち、4作品がモキュメンタリーホラー作品となった。オモコロなどのWebメディアやカクヨムを始めとした小説投稿サイトからデビューし、一躍人気作家となる著者が登場する傾向が見られる。
一方で、タイトル受賞作や定番作品は変わらず人気を集めている。第21回本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』は第2位、その続編『成瀬は信じた道をいく』が第5位となり、タイトル受賞作品の人気ぶりが伺える。また、第6位の『続 窓ぎわのトットちゃん』や第7位の『クスノキの女神』なども、話題の人気シリーズ・著者の新作を読みたいという購買行動が見て取れる。コスパ・タイパと言われて久しいが、時間をかけずに定評のある作品を選んで楽しみたいという読者意識が反映されていることがうかがえる。

【単行本実用】出社回帰による影響で美容本・時短レシピ本が人気に
2024年は、美容本や手軽なレシピ本がより注目されている傾向がある。新型コロナウイルスの影響が落ち着き、企業がテレワーク体制を見直し、出社回帰が進んだこともあり、人に直接会う機会が増え、在宅している時間が短くなったことが影響していると推察できる。総合ランキング第16位にランクインし、単行本実用ジャンル第1位の『キレイはこれでつくれます』に加え、第2位『心に効く美容』を獲得したタレント・俳優のMEGUMIの美容本が強い支持を得た。
第11回料理レシピ本大賞を受賞した第6位『弁当にも使える やる気1%ごはん作りおき ソッコー常備菜500』の著者・まるみキッチンは、史上初の2年連続で同大賞を受賞。わかりやすい手順と魅力的な盛り付け、料理初心者でも挑戦しやすい内容で、女性を中心に幅広い世代の支持を集めている。時短や作り置きといった、すぐに食べられる料理を紹介したものが改めて注目されている。
また『世界一簡単!70歳からのスマホの使いこなし術』が単行本実用ジャンルで新しくランクイン。スマホ活用アドバイザーとして15,000人に教えてきた著者が、スマホの操作をシンプルにわかりやすく説明している。スマホを使うことで得られる楽しさや利便性を強調し、高齢者が新しい技術に対して前向きになれるようなメッセージが伝わることがポイントとなっており、外出や人との交流を復活させる後押しとなっている。

【単行本ビジネス】『頭のいい人が話す前に考えていること』が上半期・年間を2連覇!
ビジネス書で唯一総合ランキング第7位にもランクインした『頭のいい人が話す前に考えていること』が、2023年年間ベストセラー、2024年上半期ベストセラーに続き、3回目の単行本ビジネスジャンル第1位を飾った。内容は仕事や日常生活で役立つ人間関係やコミュニケーションを心理学的な視点から説明し、相手の気持ちや状況を理解する重要性を強調したもの。思考力やコミュニケーション力を向上させたいというニーズは常に存在するが、人とのリアルな交流が戻ったことで、より重要性が注目されたと考えられる。
2024年3月発売の『人生は「気分」が10割』が第6位にランクイン。広告と店頭でのPOPを使用した展開も功を奏し、売上を伸ばした。累計発行部数300万部を突破したロングセラー『嫌われる勇気』も第8位にランクインし、定番書として人気に衰えがないことを示した。
資産形成・資産運用への関心も依然として高く、『はじめての新NISA&iDeCo』が2024年上半期ベストセラーに続き、上位10位以内にランクインしている。

【児童書】『大ピンチずかん』『パンどろぼう』シリーズが大躍進!
シリーズ累計発行部数175万部の人気シリーズ「大ピンチずかん」の2作目『大ピンチずかん2』が2024年上半期に引き続き、児童書ジャンルで第1位となり、総合ランキングでも第2位にランクインした。シリーズ(絵本・関連書籍含む)累計発行部数400万部(2024年10月)を突破した「パンどろぼう」シリーズも、シリーズ6作全てが上位10位以内にランクインしている。2024年8月より原画展「パンどろぼう展」が開催され、作品の世界観を味わえる展示や、関連グッズが人気を集め、多くのファンを動員した。また、2024年9月の新刊『パンどろぼうとりんごかめん』は、発売2か月にもかかわらず、第5位にランクインするなど、好調に売上を伸ばし続けている。

【新書ノンフィクション】書店の「売りたい」を促した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
2024年4月に発売し、発売1週間で発行部数が10万部を超え話題となった『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が第1位を獲得。2024年10月には「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024年」を受賞している。著者の三宅香帆は、学生時代に京都の天狼院書店で店長を務めていた経歴もあり「社会人になったら本を読めなくなった」という思いを抱えている多くの人々の共感を呼び、書店員の「売りたい」気持ちを促した。
『「老けない人」の習慣、ぜんぶ集めました。』が新聞広告の影響もあって大きく売り伸ばしたほか、2024年上半期ベストセラーに続いて『9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方』がランクインするなど、「健康」に関する需要も大きいことがうかがえる。

【文庫】「文庫化すると世界が終わる」と言われ注目されていた『百年の孤独』が第8位にランクイン
SNSや映像化による話題性のある作品や、初心者でも読みやすい作品のランクインが多く見られる中、1967年にスペインで刊行された『百年の孤独』が第8位にランクインした。ガブリエル・ガルシア=マルケスによって書かれた本作は、ラテンアメリカ文学の最高傑作と呼ばれ、その神秘的な価値や深みが薄れてしまう懸念から「文庫化すると世界が終わる」とも言われていた。しかし、日本で初めて単行本が発売されてから52年の時を経てついに文庫化。重厚なテーマと1,000円を超える高価格帯にもかかわらず、出版社による読み解き支援キットなどの提供もあり、40~60代を中心に異例のヒットを見せた。

 

■日本出版販売は書籍・雑誌の流通を担う出版販売会社(出版取次)です。
■弊社ベストセラー情報は、約2,500軒の書店様のPOS販売データを基に、全国の書店様での販売状況を総合的に勘案して作成しております。
■集計期間は2023年11月22日~2024年11月19日です。

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