NIPPAN 日本出版株式会社

「文禄堂」リノベーションプロジェクト

「文禄堂」リノベーションプロジェクト

出版物の売上の減少に伴って書店の数は減少しているのが現状です。しかし、図書館の数や貸出冊数は増えていて、実際の読書率が下がっているわけではありません。

以前より書店の声を聞きながら、「なんとかして書店をもっと人に求められる空間にしなければならない。人が、求める本に、求める形で出会える場を創っていかなければならない」と強く実感していました。

そこで、今こそ「本」の価値、「読書」の価値、そして「書店」の価値を見直し、高め、再提案することで生活者が本当に求める「本との出会い」の場としての書店、「人に愛される書店」を創ろうと日販は考えました。

そして2015年より、「あゆみBOOKS」のリノベーションプロジェクトが始まりました。書店名そのものを「文禄堂(ぶんろくどう)」としてリノベーションし、2015年12月には「文禄堂荻窪店」、2016年2月には「文禄堂高円寺店」をリニューアルオープンさせました。

「人が集まる、人に会いに行く」店
文禄堂荻窪店リノベーションプロジェクト

お店をリノベーション、いわば刷新するにあたり、私たちはコンセプトの設計から携わりました。
お店を構える南荻窪は住宅街の中にあり、土日には近くの大きな公園も家族やお子さんで賑わう街です。
何度も、お店だけでなくその”街”に足を運び、店舗スタッフの皆さんと作り上げたコンセプトは ”人が集まる、人に会いに行く” 店。
そんな店づくりを目指して、私たちのリノベーションプロジェクトはスタートしました。

コンセプトが決まったら、次はそれに見合う仕掛けづくりです。
街の人が思わず足を運びたくなる空間には、どんな仕掛けが必要か、各支店の営業部門にもヒアリングしながら考えました。

そして取り組んだひとつ目のリノベーションは、入口のレイアウト変更です。
”書店の入口って、なんとなく狭くて入り辛い” 印象はありませんか? 近くの美容院や輸入雑貨店は気軽に立ち寄れる空気感があったので、その流れで自然と店内に入りやすいよう、入り口の幅を最大4m開く仕様に変更しました。

『本だけじゃない』空間

ふたつ目は、『本だけじゃない』空間の新設です。
お店では以前より、ボールペンなどの雑貨も一部取り扱っていましたが、今回のリノベーションを通して、文房具に限らずさまざまな新商材の導入を本格的に実施しました。
ただ本の隣に並べるのではなく、わくわくするような、そして温かみのある空間を作るにはどうしたらいいか。担当メンバーでいくつもの雑貨店や、話題のお店にも足を運び、検討を重ねました。その結果、店内の雑貨スペースに屋根を付けたり、床や什器(棚)の素材、照明も本のスペースとはがらっと雰囲気を変え、掘り出し物が見つかる『雑貨小屋』のような空間を作り出しました。

本棚を搭載した電気三輪自動車(「BOOK ROUTE」)

そして最後に、最も大きな変化をもたらしたのは、本棚を搭載した電気三輪自動車(「BOOK ROUTE」)の導入です。
文禄堂荻窪店には、広くした入口すぐに、書店とは一見結びつかないようなワゴンカーが展示されています。よく見ると、そのワゴンはいくつもの箱が載せられていて、その一つ一つに絵本や雑誌、実用書など、さまざまな本が並べられています。

『人が集まる』だけでなく、『人に会いに行く』のがこのお店のコンセプト。お客様を待つだけではなく、この「BOOK ROUTE」を使って、「人に会いに行く」ことも必要です。例えば近所の公園から、野外でのイベントなど、人が集まるところに赴いたり、本がない地域に本を届けにいったりすることができる仕組みを作りました。

新たな挑戦に必ず伴う、“成長痛”と“新発見”。

「人が集まる、人に会いに行く」店というコンセプトは、今回のリノベーションの要です。ただ、「人に会いに行く」ための「BOOK ROUTE」の導入という前例のない企画を実現するには、いままでにはない難しさがありました。

本棚を搭載した電気三輪自動車(「BOOK ROUTE」)

書店の方の要望を聞き取り、電気三輪自動車の開発者やデザイナーとリノベーションの方向性・ゴールを共有することは、特に業界や会社を超えての仕事となるため、考え方や働くスタイルの違い、こだわりなどの障壁がありました。
例えば、デザイン性を重視しすぎれば、機能性の面で不具合が生じたり、その街やお店自体との調和がとれなかったりする、といった気づきもありました。
また、実際に本を入れてみると、サイズに改善の必要性があったり、時間やお金の制約の中で難しい決断に迫られたりと、実現するまでにひとつひとつの壁をとにかく乗り越える日々でした。

自分たちの知らない世界に飛び込み、互いに納得し、協力体制を築くのは非常に難しいことでしたが、わくわくすることでもありました。業界や会社の枠組みを超えて、チームとしてこのプロジェクトを実現できたことは、今後のさらなる挑戦に不可欠な経験となるはずです。

私たちの挑戦は、まだまだこれから。

今回はプロジェクトの一例を紹介しましたが、私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。冒頭でもお話しした通り、出版業界自体はいま、変革の必要があります。さまざまな困難を感じながらも、一方でチャンスでもあると私たちは捉えています。

従来のあり方や過去の成功にとらわれることなく、失敗を恐れずに挑戦を繰り返していけば、出版業界内に対してだけでなく、広く社会に対しても、新たな価値を創造できるのではないかと考えています。その具体策の一つとして、私たちは「本」「読書」そして「書店」をリノベーションしていきます。

ぜひ、これからの日販のリノベーションにご期待ください。また、一緒に新たな挑戦をしていける仲間が日販に入ってきてくれることを楽しみにしています!

「文禄堂荻窪店」リノベーションプロジェクトスケジュール

2015年 7月
リノベーションを企画・立案 プロジェクトチームを立ち上げる
8月
コンセプト設計/提携先と交渉 店舗だけでなく街や人々の暮らしを調査
9月
コンセプト“人が集まる、人に会いに行く”店に決定 コンセプトに見合う仕掛けづくりを考案
  • 入口のレイアウト変更
  • 新商材導入と陳列の工夫
  • 「BOOK ROUTE」の導入
10月
仕掛けの詳細を設計/提携先と交渉 それぞれの仕掛けを実現するための具体的なデザインや機能を設計
11月
店舗改装着手/「BOOK ROUTE」デザイン決定 店舗の改装、導入什器や商品の展示・陳列を開始 店舗改装着手/BOOK ROUTEデザイン決定
12月
ついに「文禄堂荻窪店」リニューアルオープン!